監督 園子温
脚本 園子温,高橋ヨシキ
出演 吹越満,でんでん,黒沢あすか,神楽坂恵,梶原ひかり
強烈な個性を放ち,まくし立ててグイグイ侵食てくる男,村田.弱々しい社本は、こいつに,あれよあれよという間に,犯罪に巻き込まれてしまう.気がつけば引き返させないところに来てしまっているのだ.一体社本はどこで間違えた.我々はほんのちょっとボタンを一個掛け違えてしまっただけで,取り返しのつかないことに巻き込まれてしまうのだ.運命とは残酷である.
この映画で最も印象的なのは,でんでん演じる村田の強烈さ.明るく元気に楽しく死体を『透明にする』.こんなのに飲み込まれたら,社本でなくとも無理だ.引きずり込まれて,それでもうおしまい.
そして,この村田のようなオヤジは我々の周りにいる.普通にいる強いオス.ガハハと下品な笑いをするおっさんだ.外見は陽気を装っているけど、中身は真っ暗なおっさん.町に普通にいる,うるさくて下品で迷惑だけれど憎めないおっさん.こういう普通のおっさんが実は最も恐ろしかった.
村田は,『羊達の沈黙』のレクター博士,『ダークナイト』のジョーカーに並ぶ,映画史に残る犯罪者像だ.
そんな,村田に引きづられていた,社本がボス猿を倒し自分の足でたったときのカタルシス.サル山の最下層の我々は,社本の側の人間だ.それがボス猿を倒し,群れの頂点に立つ.村田の妻,愛子はもっとも強いオスを愛する.愛子は社本のものになった.社本は君臨するのか?
我々もボス猿を排除し,新たなボス猿へとなる希望を抱く.しかし,社本はこの戦いに自ら終止符を打ち,すべてを終わらせるのだった.
ラストについては,私はこう思う.
娘には一人で生きていけと.強いオスを倒しては,また新たな強いオスが現れるゲームから離れ,一人で生きて行けと. 強いオスにケツを突き出すメスザルは楽な生き方だ.しかし,痛くても,痛い人生であっても,一人で戦い生きていくのだ.
そういうメッセージと私は思った.
すごいダークでグロテスクだけど明るく元気なエンターテイメントである.
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