『死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』
安達正勝
集英社新書
2003年12月初版
ヤングジャンプで連載している『イノサン』の種本.マンガの連載を楽しむなら必読だ.前提知識なしにあのマンガを読んでも,絵が上手いだけで何やってるのかよくわからないのだよね.雰囲気ばっかりで説明不足だし.この本を読めば毎週木曜の楽しみが2割り増しだ.
本書は,パリでの死刑執行人「ムッシュー・ド・パリ」を務めたシャルル・アンリ・サンソンの半生を描いた伝記である.シャルル・サンソンは,ギロチンの発明とルイ十六世の処刑を行ったことで有名だ.脚色が多分にあり,史実に忠実かどうかは,疑問であるが,読み物としては大変おもしろかった.フランス革命の歴史の裏側を目撃した.
興味深いのは,今日より見たら残虐刑にしか思えないギロチンによる処刑も,当時は人道的な処刑方法として考案されたということ;そして,簡単に処刑できる方法が現れたことによって,余計に死刑が増えたという事実であろう.
日本以外の国の昔の処刑方法は全く残酷だ.苦しめて殺す必然性が全然わからない.日本では打首は身分の低い人の処刑法だが,ヨーロッパでは貴族の処刑方法が打首なのだ.簡便で苦痛も少ない床が抜けるタイプの絞首刑の普及が遅いのは不思議だ.なかなか思いつかないものなのだろうか?確かに試行もそうそうできるもんではないからか.
苦痛なく確実に処刑できる方法が考案されたことで,死刑にされる人の数が増えるというのは矛盾だ.作業的に淡々と死刑執行をこなす気分というのは,想像するに耐えない.
日本は死刑が未だ存続する国だが,死刑制度の裏には,刑を執行している人がいることを忘れていた.重い行為を誰かに押し付けているという事実だけでも,死刑を廃止していい理由になるのではないだろうか.
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