2014年3月21日

『アルゴリズムが世界を支配する』

『アルゴリズムが世界を支配する』
AUTOMATE THIS: how algorithms came to rule our world
Christopher Steiner
永峯涼 訳
平成25年10月初版
角川書店

序章 ハッカー:新しい帝国を作る人々
第1章 ドミノの最初の一牌目,ウォールストリート
第2章 人類とアルゴリズムの歴史
第3章 ボット トップ40
第4章 ボットの秘密のハイウェイ
第5章 システムをゲーム化しろ
第6章 ドクター・ボットを呼べ
第7章 人類をカテゴライズする
第8章 ウォールストリートvsシリコンバレー
第9章 ウォールストリートが損をすれば他のみんなは儲かる
第10章 未来はアルゴリズムとそのクリエイターのもの

本書でアルゴリズムと言っているものはコンピュータあるいはコンピュータプログラムのことである.本来の意味とは少し離れている.大体内容は,『機械との競争』や『コンピュータが仕事を奪う』と同様である.金融業のアルゴリズムトレードに重点を置いている点が新しい.

自明なことだが,コンピュータに代替しやすいことと,難しいことがある.僅かな速度と正確性の違いが,勝敗を大きくわける証券取引などは,機械に向いていたのだ.

しかし,金融工学とアルゴリズムトレードは別の話だ.統計,データにもとづいて何かを決定する方法と,それを高速に自動的に機械にさせることは区別しなければならない.本書はそれをあまり区別せずにアルゴリズムとひと言で表しているのが気になった.

良かったのは,近年のビッグデータブームの背景が理解できたことだ.データを統計的に処理して,重要な数値を求めるなんて,金融の世界ではビッグデータ以前から行われていたことだ.まして,物理学なんてそれが当然の態度だ.

Hadoopの登場なんて,ブームを起こすほどのインパクトがあるようには思えなかったのだ.Hadoop自体は統計処理をしてくれない.大量のデータの処理には便利かもしれないが,別にこれでできるのは統計処理だけじゃない.

なぜ今さらこのタイミングでビッグデータブームが起こったのかと疑問に思っていた.きっかけリーマン・ショックだったのだ.職を失ったクオンツが,次にすることがデータサイエンティストだったのだ.ビッグデータなんてデリバティブみたいに怪しいもんだと思っていたが,納得した.

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