2013年4月24日

『文明崩壊』下巻

『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』
下巻
ジャレド・ダイアモンド
楡井浩一 訳
草思社
2005年12月初版

上巻
プロローグ ふたつの農場の物語
第1部 現代のモンタナ
 第1章 モンタナの大空の下
第2部 過去の社会
 第2章 イースターに黄昏が訪れるとき
 第3章 最後に生き残った人々―ピトケアン島とヘンダーソン島
 第4章 古の日々―アナサジ族とその隣人たち
 第5章 マヤの崩壊
 第6章 ヴァイキングの序曲と遁走曲
 第7章 ノルウェー領グリーンランドの開花
 第8章 ノルウェー領グリーンランドの終焉
下巻
 第9章 存続への二本の道筋
第3部 現代の社会
 第10章 アフリカの人口危機―ルワンダの大量虐殺
 第11章 ひとつの島,ふたつの国民,ふたつの歴史―ドミニカ共和国とハイチ
 第12章 揺れ動く巨人,中国
 第13章 搾取されるオーストラリア
第4部 将来に向けて
 第14章 社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?
 第15章 大企業と環境―異なる条件,異なる結末
 第16章 世界はひとつの干拓地

下巻の感想

上巻に引き続き,下巻も興味深かった.でも,長くてダラダラと書かれているのが嫌だな.

下巻では,まず過去においての文明の存続の成功例を挙げ,成功の2通りのアプローチを示す.すなわちトップダウンとボトムアップである.

社会が持続不可能と分かったとしても,それを解決することは痛みを伴うものだ.実行するには,強いリーダーシップ,つまり権力が必要だ.これがトップダウン・アプローチである.

もしくは,社会が充分に小さければ,すべての住人が問題に当事者意識を持たざるをえない.草の根的に問題への取り組むが起こってくる.これがボトムアップ・アプローチだ.

つまり,すべての構成員が社会の問題を自らのものと思うことができないほど,社会の規模が大きく,また,集団の意思決定を一律に行えるほどには集権的でないとき,社会は崩壊に対して対策を取ることができない.ゲーム理論でよく研究されてそうな問題だ.興味があるので,今後調べることにしよう.

さて,それを踏まえて現在ではどうだろう?社会の行末も気になるが,私の会社はどうだろう?非常に心配になってくる.全従業員が当事者感覚を持つには規模が大きすぎる.また,トヨタ自動車のように現場からボトムアップに改善していく文化があるのだろうか.また,統一された意思決定より,セクショナリズムが優先されていないか?不合理と思える経営判断も目立つ.また,それを嬉々と語っているところに非常に不安を感じる.

私は私のすべきことを充分できるほどまだ能力はないので,自分のことで精一杯だ.集団のことを心配できるような立場にはない.しかし,不安になってくる.

文明崩壊の問題は,社会に対しては個人の力ではどうすることもできないというのが大きい.どうにかしなければならないと皆が思っていても,個人は自分の生活を守るのが限界というのが,問題の本質だと思う.

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