2013年12月21日

『でっちあげ』

『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』
福田ますみ
新潮文庫
平成22年1月初版

ほんとかよ,という話.

昔ニュースになっていて,こんなとんでもない教員がいるのかと思った記憶がある.このような結末になっていたのか.

この本のほうがでっちあげだという意見もあるみたいだ.確かに,裁判でも体罰は認定されているし,市も停職処分にしている.後から捏造だ,冤罪だというのも変な話だ.

本書の主張が正しいなら,どうしてこんな事になったのか?という疑問が起こる.

被害者と言われる児童の両親の言い分を鵜呑みにした校長も,ある側面からは良心的なのだろう.問題があっても,隠し立てしようとせず,マスコミに対して口をつむぐわけでもなくわけでもなく,対処しようとしたのだから.最初から,体罰があったという前提で話を聞かなかったといっても,一度印象を持ってしまったら変わらないものだ.

加害者と言われた教諭が,最初の印象を払拭するべく強く主張しない限り,思い込んだことが覆ることはないのではないか.世の中,理不尽や不条理ばかりだ.教諭のように自分が犠牲になればいいと諦めて,嵐が過ぎるのを待つのもひとつだが,最初に立ち向かわないと,動き出したものは止められなくなるのではないか.でも,『国家の罠』等を思い出して,やっぱりどうしようもないよなという思いに至る.

被害を訴えた母親について,妄想と現実の区別が付かない人は確かにいる.誰しもそういう所はあるけれど,頭の回路がどこで短絡しているのかと不思議になるほど,その傾向が強い人はいる.現実の方を否定して,周囲の現実を侵食しはじめるから,たちが悪い.しかし,現実歪曲空間なんて言葉があるぐらいだから,一様に悪いわけではないのだろう.

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