2013年1月30日

『ミラーニューロンの発見』

『ミラーニューロンの発見 「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学』
マルコ・イアコボーニ
塩原通緒 訳
ハヤカワ新書juice


第1章 サルの「猿真似」
第2章 サイモン・セッズ
第3章 言葉をつかみとる
第4章 私を見て,私を感じて
第5章 自分に向きあう
第6章 壊れた鏡
第7章 スーパーミラーとワイヤーの効用
第8章 悪玉と卑劣漢―暴力と薬物中毒
第9章 好みのミラーリング
第10章 ニューロポリティクス
第11章 実存主義神経科学と社会



アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読んで,ミラーニューロンを連想した.しかし,ミラーニューロンについてあまり良く知らなかったので入門書として読んだ.

ミラーニューロンの発見とその後明らかになったことを,研究を紹介しながら解説している.内容を詰め込みすぎで,深く説明していないから,やや読みづらかった.図表も全くないし,どんな装置でどんな実験したのか理解しにくかった.実験のデータを示してもいない.詳しく知りたければ,論文を読めということだろう.

新しい発見は,感情は身体的なものだということだ.ミラーニューロンは共感を司る神経細胞だと思っていたから,ミラーニューロンは高度に精神的なものだと勘違いしていた.ミラーニューロンは他者の身体的な動きを見たときに発火するものだ.他者が物を取る動きを見ると,こちらの手の運動をする部分が発火する.同様に,感情を示す表情を見たときには,こちらの顔を動かす部分が発火するのだ.感情や心というと身体から離れたところにあるものと思ってしまうが,共感するには身体で表さられたものでなければならないのだ.感情が先に生まれたのか,共感が先に生まれたのか.それは定かでないが,おそらく同時に進化してきたものだろう.身体によって外に表現されるものが感情なのだ.

『アンドロイドは電気羊~』の感想で,アンドロイドと人間の違いはミラーニューロンの有無か?と書いた.自閉症の人は,ミラーニューロンの働きに問題がありそうだということだ.自閉症の人に会ったことがないので,自閉症がどういうものなのかよく分からないが,アンドロイドと自閉症は異なっていそうだ.ディックはミラーニューロンのことを知っていたわけではないが,よく考えてみれば共感がなければ,感情もないし,言語だってない.そう思うと,『アンドロイドは電気羊~』に描かれるアンドロイドの姿は,少し変だ.それでも,人間の特徴が共感能力だというのは,非常に的確だ.本書を読んで,改めて思った.

スーパーミラーニューロンというものの事も書かれていたが,本書を読む限り全くあると証明されていないではないか.あっても不思議ではないが,あるかないか分からないものに名前を付けて,さも分かっているかのように言ってる.地学みたいな計りようがないことが多い他の分野と同様,神経科学もけっこういい加減な分野なんだなと思った.

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