2013年7月20日

『ブラック・スワン』

『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』
"THE BLACK SWAN"
Nassim Nicholas Taleb
望月 衛訳
上下巻
ダイヤモンド社
2009年6月初版

上巻
 プロローグ
第1部 ウンベルト・エーコの反蔵書,あるいは認められたい私たちのやり口
 第1章 実証的懐疑主義者への道
 第2章 イフェゲニアの黒い白鳥
 第3章 投機家と売春婦
 第4章 千と一日,あるいはだまされないために
 第5章 追認,ああ追認
 第6章 講釈の誤り
 第7章 希望の控えの間で暮らす
 第8章 ジャコモ・カサノヴァの尽きない運―物言わぬ証拠の問題
 第9章 お遊びの誤り,またの名をオタクの不確実性
第2部 私たちには先が見えない
 第10章 予測のスキャンダル

下巻
 第11章 鳥のフンを探して
 第12章 夢の認識主義社会
 第13章 画家のアペレス,あるいは予測が無理ならどうする?
第3部 果ての国に棲む灰色の白鳥
 第14章 月並みの国から果ての国,また月並みの国へ
 第15章 ベル・カーブ,この壮大な知的サギ
 第16章 まぐれの美学
 第17章 ロックの狂える人,あるいはいけない所にベル型カーブ
 第18章 まやかしの不確実性
第4部 おしまい
 第19章 半分ずつ,あるいは黒い白鳥に立ち向かうには
エピローグ

筆者がブラック・スワンと呼ぶ,飼いならすことのできないリスクに関するエッセイ.

ブラック・スワンの定義は以下の通り.

第一に,異常であること.つまり,過去に照らせば,そんなことが起こるかもしれないとはっきり示すものは何もなく,普通に考えられる範囲の外側にあること.第二に,とても大きな衝撃があること.そして第三に,異常であるにもかかわらず,私たち人間は,生まれついての性質で,それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道をつけたり,予測が可能だったことにしてしまったりすること.
(上p5)

マンデルブロが『禁断の市場』でワイルド型といわれるランダム性をもつリスクがブラック・スワンだ.本書では最果ての国に属すると表現されている.正規分布で管理できない.平均値が意味をなさない.勝者総取りの世界だ.

定義が曖昧だなと思うけれど,かっちり定義して扱えないのがブラック・スワンだ.この扱いにくい不確実性にどう対処するべきか.それは諦めることだ.

重要なのは,ブラック・スワンという種類の不確実が存在することを知ること.そして,ブラック・スワンの存在を受け入れること.分からないものは分からないと割り切るということだ.最悪なのはブラック・スワンを月並みの国に押し込めて安心することだ.

でも,正規分布って便利だ.正規分布を否定したら相当数の人が職を失うのではないか.正規分布を仮定できないものをあつかうには,我々の能力は低すぎる.

飼い馴らせないから,諦めるってのは気持ちが悪い.知識が足りないから管理できないのか.それとも,本質的に管理できないのか.

現実を直視しない態度は科学的でないが,飼い馴らせないと諦めてしまというのも科学的でないと思うのだ.

あと,誰かが現代は不確実性が増えて,ブラック・スワンが多い時代だ言っていたけど,あれは嘘だ.

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