2013年11月2日

『桶川ストーカー殺人事件―遺言』

『桶川ストーカー殺人事件―遺言』
清水潔
新潮文庫
2004年初版

記者はすげえ.

映画『凶悪』を観ても思ったことだが,なにが彼らをそこまでさせるのだろう?正義のためか,自己顕示のためか,職業倫理のためか.著者の取材の様子は,教科書的なジャーナリスト像だ.

これはうちの管轄で起きた事件だ,横取りするな;ドラマとかでよくあるような警察もいれば,本書にある上尾署のような警察もいる.どちらも現実だろう.

「でも,俺はおじさんみたいにこういう警察の対応を許せないとは思わないよ.彼らは捜査本部なんか存在しなければ,夕方さっさと仕事を終えて,駅前の赤ちょうちんで一杯やるか,家に返って野球中継でも見るか,そんな普通の人達なんだよ」
 それはそうだろう.警察官だって人の子だ.普通で悪いとは全然思わない.だが,だからといって事件があるのに捜査をしない,まして事件そのものをなくしてしまおうという奴らをかばって嘘をつくなど許されることか.
「事なかれ主義と言ってしまえばそれまでだけどさ,保守的な人たちはどこの世界にもいるよ.問題は避けて通りたいさ.警察官だって同じだよ.みんなサラリーマンなんだぜ」
(p.327)

分からなくはないのだ.

機動警察パトレイバー』の後藤隊長の『警察というのは風邪薬と同じ』という言葉を思い出す.この事件の場合には風邪薬にすらならなかったので,その怠慢は許されないものだろう.

三鷹のストーカー殺人事件で警察へ批判がいったのは,桶川の件が背景にあったからだろうけど,警察は抑止力にはなっても,予防にはならない.未然の異常者をしょっぴくことは出来ないわけで,警察も難しい場所にいると思う.

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