『エコノフィジックス 市場に潜む物理法則』
高安秀樹 高安美佐子
日本経済新聞
2001年12月初版
第1章 経済とゆらぎ
第2章 マーケットを価格の動きからみる
第3章 価格変動のモデルと先読み
第4章 企業の成長に関する法則
第5章 お金とは何か
同著者の『経済物理学の発見』がなかなか興味深かったが,縦書の新書であり,数式を用いた詳しい説明や引用がなかったので,それを補うために読んでみた.内容は『経済物理学~』とほとんど同じである.
第5章は一般論でわざわざ読むまでもないので,読み飛ばした.
経済学,特に金融に興味があるから,面白いのか?それとも,経済物理学というアプローチが面白いのか?
確かに興味深い知見は得られていると思うが,それは新しいことなのか?すこし怪しいと思ってしまう.
そして,最も疑問なのが,物理学と名前がつくが,経済に力学とのアナロジーを見出しているだけに過ぎないと言う点だ.物理学が蓄積した解析手法の適用先として経済を選ぶというのは理解できる.しかし,このアプローチを続けても,経済の根本原理に近づいていくように思えないのだ.
これまでに知られていることを,別の側面から説明しただけじゃないかな?為替はブラウン運動をしているわけではないじゃない.似ているってだけで.似ているというところに面白さを見出すことはできる.
まあ,科学なんてそういうゲームだからそれでいいのかな.だからどうしたってのはナンセンスな議論だよね.
細かい動きには何かしら法則があるということは分かった.そして,かなり分かってきているということも.
でも,そういう変動ってあまり重要ではないと思うのだ.
いや,時間スケールにもよるのだろうか.バブル景気のように長いスパンで起こると影響は大きい.しかし,バブル景気が単純に大きいゆらぎというだけではなかろう.
昨年のユーロ危機に伴う円高や,それが解消したことによる現在の株価の高騰は,ゆらぎといってしまうには歴史的な意味づけがありすぎる.
ニュースで市場が動く事例はあるのですが,自発的な市場のゆらぎのほうが通常ずっと大きく重要だということです.(略)やはり,外国為替の市場を支配しているのは,自発的な市場のゆらぎであると言うことができます.
『経済物理学の発見』p.87
私の感覚だと,ニュースで動く事例の方が重要だ.物理学的に解析できないことを無視してしまっている.
金融工学もそうだが,明日は一度しかこないのに,それを統計的に処理することにそもそも無理があると思う.
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