『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』
上巻
ジャレド・ダイアモンド
楡井浩一 訳
草思社
2005年12月初版
上巻
プロローグ ふたつの農場の物語
第1部 現代のモンタナ
第1章 モンタナの大空の下
第2部 過去の社会
第2章 イースターに黄昏が訪れるとき
第3章 最後に生き残った人々―ピトケアン島とヘンダーソン島
第4章 古の日々―アナサジ族とその隣人たち
第5章 マヤの崩壊
第6章 ヴァイキングの序曲と遁走曲
第7章 ノルウェー領グリーンランドの開花
第8章 ノルウェー領グリーンランドの終焉
下巻
第9章 存続への二本の道筋
第3部 現代の社会
第10章 アフリカの人口危機―ルワンダの大量虐殺
第11章 ひとつの島,ふたつの国民,ふたつの歴史―ドミニカ共和国とハイチ
第12章 揺れ動く巨人,中国
第13章 搾取されるオーストラリア
第4部 将来に向けて
第14章 社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?
第15章 大企業と環境―異なる条件,異なる結末
第16章 世界はひとつの干拓地
上巻の感想
文明社会が崩壊するのはどういったときなのか?そして,我々の現代社会は崩壊から逃れることができるのか?過去に学び,未来を生きることができるのか?そういった疑問に挑む意欲作.
上巻はイントロダクションとして,現在のモンタナについて述べたのち,過去のいくつかの社会について考察している.
具体例が豊富なのは非常にいいが,ダラダラと書かれていて,疲れた.同じテーマで単行本2巻のボリュームは読み応えがある.
興味深いのはやはりグリーンランドのバイキングだろう.同じグリーンランドに住むイヌイットの社会は崩壊しなかったにもかかわらず,バイキングの社会は崩壊してしまった.キリスト教徒でヨーロッパ人だという自意識のために,バイキングがイヌイットの生活を参考にしなかったことが,この違いを生んだ原因だと著者は推測している.
歴史はイデオロギーがつくるものではなく,気候がつくるものだという学説があるらしい.環境決定論というものだが,著者は主にこの視点から歴史を見ている.しかし,バイキングの場合を見ると慣習は,地域の環境だけで決まるのではなくて,社会のつながりによっても大きく影響されるのだ.
過去の例を見ると,文明社会が崩壊する主な原因は環境資源を食いつぶしてしまうことにあるようだ.その社会の生活が持続不可能であって,資源の現象とともにじわじわと弱ってきたところを,気候変動や外敵なのによって止めの一撃をくらうというのが典型的な崩壊のシナリオだ.
そう思うと現在の社会は大丈夫か?と考えざるを得ない.その辺の考察は下巻にあるのだろう.下巻に期待.
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