2012年12月16日

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』
半藤一利
文春新書

第一章 「リーダーシップ」の成立したとき
第二章 「参謀とは何か」を考える
第三章 日本の参謀のタイプ
第四章 太平洋戦争にみるリーダーシップI.
第五章 太平洋戦争にみるリーダーシップII.
 太平洋戦争を題材に,日本型リーダーの問題点とあるべきリーダーシップ像について記す.

 前半では,日本型リーダーシップの特徴と問題点を指摘する.
 日本型リーダーとは何か?
『いきおい総大将はおごそかなる権威があればいい,実際の指揮官たる参謀長および幕僚さえしっかりしていれば,戦さはうまくいくと考えたのです.ここに日本型リーダーシップの発祥がありました.』p.45
『それはひと言でいって「参謀が大事だ」という考えです.総大将は戦いに疎くても参謀さえしっかりしてれば大丈夫,戦さには勝てる.』p.47
『実際は,大山も東郷も,参謀の上にただ乗っかっていたわけではなく,戦場では参謀たちに指示を出し作戦を指揮していたのですが,とにかくだまって部下の作戦・行動をみまもる静かにして重々しく堂々たる総大将という人物像がつくられた.』 p.60
『こうして帝国陸海軍の軍人が頭に描く理想のリーダーは,「威厳と人徳を持つ人である」とうことが確定した.』p.62 
司馬遼太郎の『項羽と劉邦』で描かれる劉邦のリーダーシップが,本書でいう日本型リーダーシップに近いだろうか.リーダーは何もできなくていい.人を包み込む大きな徳を持っていればいい.優秀な人が勝手に集まり,全てやってくれる.
 この日本型リーダーシップの問題点は,権限と責任が分離してしまうことにある.責任を持ったリーダーの下に,権限を持った参謀がぶら下がる.権限の行使は参謀によって行われるが,彼らは責任を取らなくても良い.参謀が勝手に行動して,暴走してしまう.
 また,意志決定の所在があいまいである.多くの参謀がそれぞれで動くために,統一された決定がなされない.
 現在の官僚による統治機構も,日本軍と同様の問題を抱えているように見える.
 日本型リーダーの問題というのは,これはシステムの問題だ.プレーヤーとして内部で戦う場合は,そういうものだと理解して戦わなければならない.そして直せるときには少しずつ改善していけばよいのだ.

 後半では,太平洋戦争での日本型リーダーの失敗を踏まえて,筆者の考えるリーダーの条件を示している.
  • 最大の仕事は決断にあり
  • 明確な目標を示せ
  • 焦点に位置せよ
  • 情報は確実に捉えよ
  • 規格化された理論にすがるな
こういうのはよく語られる内容である.確かにそうだけど,聞いてできれば苦労はしないし,できればとっくにやっている.話だけ聞いても役にも立たないし,頭の片隅にでも押し込めておこうと思う.

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