2012年12月31日

『ニューロマンサー』

『ニューロマンサー』
"Neuromancer"
Willium Gibson
黒丸尚 訳
ハヤカワ文庫SF


 サイバーパンクSFの代表作.はじめて読んだ.
 サイバーパンクSFというのは,コンピューターネットワークを中心としたSFのジャンルだ.有名なものには『攻殻機動隊』,『マトリックス』,『ブレードランナー』などがある.サイバーパンクSFに分類されるものの世界観の特徴は,近未来で酸性雨やスモッグなどで空が曇っていて薄暗く,ジメジメとしていることだ.ビル群が立ち並んでいるが,ダクトは剥き出しで,汚れている.明るくないのだ.
 さて,本書.読みにくい.SF小説は独自の用語を使うが,それを説明しないために非常にわかりにくいことがよくある.本書も多分に漏れない.そして,修辞も周りくどくてわかりにくい.
 ひと通り読んだが,あまり理解できていない.
 しかしながら,本書の世界観は驚くべきものだ.『攻殻』や『マトリックス』の原典はこれだったのかと,今さらながら知った.本書が刊行された25年以上前にはインターネットもない.それなのにこれを書く想像力には感嘆する.SFは世界観だ.話の面白さとかは二の次だ.
 『攻殻』や『マトリックス』に登場するガジェットの元ネタも多数登場する.攻性防壁である氷(アイス).エージェント・スミスと冬寂(ウィンターミュート).マトリックスという言葉も同じ意味で使われる.ザイオンだって出てくる.
 そもそも『マトリックス』は当初は本書の映画化という企画だったらしい.そうだったらよかったのにと思ったが,調べてみると再び映画化の企画も進行中だそうだ.今さらやっても『マトリックス』のまがい物になるだけじゃないのかという気もする.しかし,期待度は高い.
 SFは小説より映像の方が向いている.これを映像で見たい.



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